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フンメルのピアノ協奏曲第5番変イ長調


フンメルのピアノ協奏曲第5番変イ長調を聴いている。フンメルについてはこのブログで以前に、ピアノ協奏曲第2番と第3番を取り上げたことがある(→こちら)。クラシック音楽にはものすごく良い曲なのにファン以外にはそれほど知られていない・聴かれていない名曲が少なくないが、この曲もそんな曲だ。


Piano Concerto / Concertino Op 73

Piano Concerto / Concertino Op 73


フンメルは時代としては古典派とロマン派の中間に現われた「鍵盤の散文家」で、まずピアノが語り口が非常に雄弁な作曲家である。同時代の他のピアノ協奏曲と同じように、フンメルのピアノ協奏曲も、ピアノとオーケストラの調和というよりは、ピアノが弾きまくる局面が多い。そこが好きなポイントである。


フンメルのピアノ協奏曲第2番と3番は、ショパンの2曲のピアノ協奏曲と比べてもそん色ない傑作だが、私は、第5番はそれらをさらに一歩超えていると思う。もっというと、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番『皇帝』やシューマンのピアノ協奏曲と並ぶ傑作ではないだろうか。それらと並んで、3大ピアノ協奏曲と呼んでもそれほど問題がないように思える。そして私が好きなピアノ協奏曲でもある。


同様に好きな曲としては、サン=サーンスピアノ協奏曲第2番も私はかなり好きな曲なのだが、フンメルのピアノ協奏曲第5番は、それと並んで好きな曲だ。とても良い曲なので聴いたことない人は騙されたと思って一度聴いてみてほしい。


◇  ◇  ◇


山に女性的な山、男性的な山があるように、曲にも男性的な曲と女性的な曲があると思うのだが、ピアノ協奏曲第5番は後者。明らかに女性的な曲だ。「貴婦人のような」という表現が最もふさわしい曲、と私は勝手に思っている。


第1楽章。冒頭は仕掛けに満ちている。仕掛けの後はオーソドックスである。円熟を示すような堂々とした展開。第1楽章のオーケストレーションの壮麗さはベートーヴェンの『皇帝』と並ぶ。さらにピアノが弾きまくる。安心する。まさしくフンメルのピアノ協奏曲だ。


第2楽章。見えない未来を暗示するかのような重々しいメロディ。先行きは不透明である。言いたいことの半分も言えないような鬱屈した感じ。


第3楽章。第2楽章から続いて演奏される。あれだけ不透明に思えた未来が実は明るいものだった。蜂蜜のように甘美なメロディである。気持ちが高ぶる。聴いているあいだ、温かい気持ちでいっぱいになる。最初から最後までメロディは美しく、品がある。ポジティブで堂々としたフィナーレは万人を幸せにする。


これだけ好きな曲なのに、コンサートで聴ける機会が「皆無〜まずありえない」というのは悲しい。CDも種類があまりないのだが、私はハワード・シェリーの弾き振りによるものを聴いている。これが「当たり」の演奏で、ピアノの名人芸を堪能できる。


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