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ラトル&ウィーン・フィルの交響曲全集


斬新なベートーヴェンの演奏を聴きたかったら、サイモン・ラトルウィーン・フィルとのコンビで録音した交響曲全集がよいと思う。


Symphonies 1 - 9 - Rattle

Symphonies 1 - 9 - Rattle


この全集は発売当時、大変な話題となり、賛否両論を巻き起こした。「これはやりすぎだ」という意見と、「おもしろい」という意見に真っ二つに分かれた。たぶん、両者の比率は半々である。


この全集でラトルは、デル・マー校訂によるベーレンライター版をベースとしながらも、独自の楽譜の読みを加えたオリジナルな音楽作りを行いつつ、演奏スタイルとしては、伝統あるウィーン・フィルにピリオド奏法を徹底させている。美しいビブラートを信条とするウィーン・フィルにノン・ビブラートのピリオド奏法を求めているのである。


しかしそこから生まれる響きは、ギリギリの緊張感に満ちていて素晴らしいものだ。響きは重厚ではないが溌剌としている。音色は適度に艶っぽく、コクがある。甘すぎない。天下のウィーンフィルがピリオド奏法という普段しない奏法をしながらも、ウィーン・フィルウィーン・フィルであることを一時もやめない。絞り出されるように美しい音が出てくる。両者のプライドのぶつかり合いと緊張感がひしひしと感じられる。


全体的には偶数番号の演奏が良いように思えるが、3番『英雄』もすぐれている。3番はすこしも「英雄」的でなく、敵陣で先頭を切る「前衛」のようである。5番での暴れっぷりも聴き逃せない。


特に私は6番『田園』が傑出していると思った。こんなにはげしく攻め立てる、安らぎのない『田園』は他にない。攻撃的な小動物のようだ。


7番、9番についても、フィナーレはやりたい放題で、楽聖ベートーヴェンの誇り高い音楽を、喧騒と狂乱と暴走のフィナーレとして、まったく悪びれるところもなく演じている。


その他の曲もいたるところに「!」という驚きと発見がある。独自ではあるが確信に満ちた解釈。意欲とアイディアに富んだ表現。テンポ設定へのマニアックなこだわり。前に前に向かう攻撃的な姿勢。鋭いアタック。とても刺激的である。


賛否のあった全集ではあるが、私は「賛成」の立場で、聴くたびに新たな発見があり、よく聴いている。先日も通勤時に何日かかけて9曲全曲聴き通すという、「通勤チクルス」をやったところだ。


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