『山守屋』のハンバーグ

細々と、洋食屋めぐりを時間を見つけては続けている。多くの店で飽きもせずにハンバーグばかり食べ続けているが、店によって、それぞれの工夫が味に出ていて、違いがあって飽きない。

今日は大阪の洋食屋の老舗『山守屋』を紹介したい。

『山守屋』は、大阪キタの繁華街である北新地の真ん中にある。同時に、ビジネス街からも近いので、サラリーマンの昼食利用も多い。昼はサラリーマン、夜はホステスで賑わう、「大人」御用達の洋食屋である。

こんな都会のど真ん中、このご時世に、中心メニューのハンバーグステーキが650円という低価格で、それを頑なに守り続けている。これは意地であり矜持である。立派。毎年のように値上げをするどこかのラーメン店の店主は一度見学に行った方が良い。

『山守屋』を訪れたこの日、私はもう少したくさん食べたかったので、エビフライ付きのセットを注文した。こちらは1,500円。

エビは小ぶりではあるが、（全国のエビを敵に回すことを承知で表現するなら）まるでエビフライに揚げられるために生まれてきたかのようにプリプリである。総数３尾。１尾目は体験、２尾目は解釈、３尾目は余韻。私は基本的に尻尾は食べないが、とてもおいしいエビフライを食べる時に限っては、尻尾まで食べることにしている。堅い尻尾を食べているとき、次に食べる身への期待が高まるからだ。だから３尾目は尻尾から食べる。というのは嘘で、３尾目も頭から食べる。かなりどうでもよい話だが。

あとは、セットに付いてくるスープがかなりおいしい。そして熱々である。よくあるコーンポタージュだが、生クリームの風味が濃いため、コクがすごい。旨みが口の中で爆発する。大衆洋食屋のポタージュではない。これは、高級ステーキ店で出されるようなポタージュである。価値がある。

ハンバーグの焼き加減は表面に焦げ目が少し付くくらいの絶妙さである。だから、切った時に肉汁がドーッと溢れ出てくる。私が一番好みの焼き加減だ。肉はまず牛肉の風味が強く飛び込んでくる。良い肉を使っている。ソースは苦味とコクが感じられる。文句の付けどころのないハンバーグだ。大阪に洋食屋は多いが、ハンバーグに関して、私の好みで言うと、ベスト５に入る。

『山守屋』は、若者がガツガツ食べる洋食屋ではない。昔から好物だった洋食を、それなりに齢を重ねた大人が、食べたい時に、適度な量、食べるという用途に最も適している。実際、年配の常連客が多い。私も、頻繁には行けないが、近くを通った時には寄りたい店の一つだ。