USHINABE SQUARE

クラシック名盤・名曲と消費 生活 趣味

追悼アバド


指揮者のクラウディオ・アバドが亡くなった。2000年に大病を患い療養を余儀なくされたが、生還した時、アバドの音楽は、これまで以上に清々しく、神々しいばかりのひたむきさを備えていた。しかし病名が癌だということが知れ渡っていたので、アバドの音楽に感動しながらも、いつか来る「その日」はそう遠くはないのかもしれないと感じていた。2014年1月20日。ニュースで知った。享年80歳。天に召される。


クラウディオ・アバド。イタリア人の指揮者。スカラ座やロンドン響などの指揮者を経て、カラヤンの後任として、1990年から2002年までベルリン・フィルの芸術監督を務めた。ベルリン・フィルとのコンビについては、現芸術監督のサイモン・ラトルのグイグイ攻めてくるような音楽もまた素晴らしいが、私は、アバドの頃が一番好きだった。


歌を大事にするイタリア人指揮者らしく旋律の歌わせ方は天性のものがある上に、嫌みがなくて、特有のすっきりとした響きは他に代えがたいものがあった。若い頃は溌剌とした音楽作りだった。清々しく、颯爽としていた。復帰後はちょっと他の追随を許さないような深い味わいを持つようになった。美しく枯れている、という矛盾した形容詞がぴったりの音楽をするときもあった。復帰後のベートーヴェン交響曲全集は宝物だ。また、この頃のアバドマーラーの演奏は、ワルターバーンスタインと並んで、演奏史に残る傑出した演奏である。そして最近のモーツァルトの録音を聴いたときには、「なんと幸せな音楽人生を送っていることだろうか」と思った。若い音楽家に囲まれながら行ったこのシリーズは、余分な力が抜けていて、なんと言うか純粋で、晩年のアバドの美しい音楽人生に拍手を送りたい気分だった。


ラヴェル:ボレロ、スペイン狂詩曲、パヴァーヌ

ラヴェル:ボレロ、スペイン狂詩曲、パヴァーヌ


アバドボレロ。燃える「ボレロ」。情熱が迸るような、これは本当にすごいボレロなのでぜひ聴いてみてほしい。


Symphonies (Complete) (Comp)

Symphonies (Complete) (Comp)


アバドベートーヴェン。病気から生還したアバド。なのに深刻にならない、予想を裏切るベートーヴェンだ。まったく凄絶でなく、スマートなベートーヴェンだ。まるでベルリンフィルの芸術監督就任前のように若々しく、スピード感に溢れた演奏を聴かせてくれている。


マーラー:交響曲第9番

マーラー:交響曲第9番


アバドマーラー。9番はこの少し前にブーレーズの録音が出て評判となったが、アバドはさらにそれを上回る演奏だった。細部まで突き詰められており、まるでiPadretinaディスプレイのような鮮明さである。攻めており、深いところをえぐっている。


Mozart Symphonies (Bril)

Mozart Symphonies (Bril)


モーツァルト。オケはアバドが育てたモーツァルト管弦楽団で、このオケは団員の多くが20代である。これからを担っていく若い演奏家と、巨匠となったアバドクラシック音楽の過去・現在・未来をみているようで、微笑ましい。


アバドについては、私は過去のブログでこんなことを書いた。

個人的に、いま一番「ありがたい」指揮者だと思う。大病を患って、復帰してから、つくりだす音楽が異様に深くなった。青年時代の、スマートでエネルギッシュな音楽づくりもよいが、最近の演奏は美しく枯れている。神々しいとすら感じる。


真摯でひたむきで、「ありがたかった」アバドの音楽。しかしもうリアルタイムでアバドの姿を見ることはできない。新しい演奏を、本当に聴くことができなくなったという実感を持てない。いまは残念な気持ちでいっぱいである。


どうか安らかにお眠りください。


人気ブログランキングへ
ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村 クラシックブログへにほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へにほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ