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竹生島クルーズ


琵琶湖には島がある。


滋賀県の人や、滋賀で仕事をしたことがある人ならかなりの割合で知っていることだが、関西、あるいは西日本、全国にひろげてみると、どれくらいの人が知っているだろうか。琵琶湖には4つの島がある。竹生島。多景島。沖島。沖の白石。


竹生島はその中で最もよく知られていて、島へのクルーズは、長浜市を訪れる観光客に特に人気がある。西国三十三ヵ所の札所である宝厳寺がある巡礼の地でもあり、他には都久夫須麻神社(つくぶすまじんじゃ)という神社もある。古来より神が棲む島と言われ、信仰の対象とされてきた。


琵琶湖の島。私は、随分前にそのことを考えた時、なぜかゾクゾクした。琵琶湖の中に島があるということだけでも普通じゃないのに、そこには普通に行くことができる。以来、いつか行ってみたいところのうちの一つだった。ただし遠い。長浜に行くだけでも遠いのに、そのうえ、船に乗るなんて。


→琵琶湖汽船の竹生島クルーズはこちら


◇  ◇  ◇


その日、私たちは午後から夫婦で急に休みが取れることになった。前日の夜までに長浜に入って、翌朝の朝の便で竹生島に渡ることを決めた。夏休み中の土日なのに、また、日にちが近かったのに、ホテルが空いていた。また当日は雨の予報だったが、なぜかその日、竹生島に行っている間だけは雨に降られず、帰りは豪雨だった。後で振り返ると、いくつかの偶然が重なり、開かなかった扉が簡単に開いたように、竹生島に行くことができた。それはまるで何かに招かれるようにして。不思議なことだ。


◇  ◇  ◇


前日は夕方に長浜に着いたので、乗船券売り場はもう閉まっていた。長浜市内で夕食を摂り、ホテルに帰って早めに休んだ。翌朝、7時にチケット売り場に行くと、まだ開いていない。朝8時に行くと、窓口が開いていたが、9時発のチケットを買うことができた。チケットは帰りの便もセットとなっている往復チケットで、あらかじめ帰りの便が決められている。9時発の便の帰りは10時50分となっている。



竹生島クルーズの船は、100人くらい乗れそうな大きさだが、この船がほぼ満杯になった。夏休み期間中は人気のようだ。いまならそんなことはないだろうが、7月や8月の夏休み期間中は、希望の時間がある場合には早めにチケット売り場で購入した方がよさそうだ。



琵琶湖には波があるが、さざなみという感じの波なので船はそれほど揺れない。琵琶湖はとても広いので、対岸が見えず、湖という気がしない。無意識に「海を渡ると」とか言ってしまう。船内では竹生島の紹介映像が流されていて、それを見ているうちに到着する。クルーズの時間は約30分だ。


島に着くと、土産物を売る売店がある。売店の人は住んでいるわけではなく通っている。もともと、信仰上の理由もあって、竹生島には人が住めないことになっている。神職や僧侶は寝泊まりしても良いことになっているが、基本的には朝に島に来て、夜に帰っている。


売店を抜けると拝観受付があり、そこで拝観料を払う。島は観光客が出入りできるエリアがごく限られていて、大体30分もあれば1周できるくらいのコースとなっている。その中で絶対に外せないのが、宝厳寺と都久夫須麻神社(つくぶすまじんじゃ)だ。


拝観受付を済ませると、ほとんどの観光客がまずは宝厳寺の本堂を目指すことになる。本堂へは急な石段が続く。



宝厳寺の本堂(弁財天堂)。


本堂の本尊は弁財天だ。日本三大弁財天の一つであるが、秘仏である。その代わり、御前立の弁財天を拝観することができる。弁財天は右と左に一対。どちらも異彩を放っている。弁財天というと、よく楽器を持っている仏像を思い出すが、竹生島の弁財天は武器を持った珍しいものだ。色は白く、体系はぽっちゃりとしている。口元は笑っているようにも見える。しかし目が笑っていないのが怖い。なんとなく気味が悪くて、夢に出てきそうだと思った。この二対の弁財天像は、戦国大名浅井久政の奉納によるものなので、その気味の悪さは仏像ながらに戦国時代の血生臭い歴史を見てきたものによるのかとも思った。まるで生きているような、とも例えられる。仏像を見てこんな気持ちになるのは初めてだった。残念ながら仏像の写真は載せられないので、まだ見たことのない方は、ぜひgoogleで、「宝厳寺」「弁財天」で検索してみてほしい。


また、宝物館でも弁財天が祀られている。こちらも凄い存在感の弁財天で、必見だ。正面に立つと、話しかけられそうな雰囲気だ。こちらの姿が見えているんではないかと思った。そんなことはないのだが、なんとなく居心地が悪い感じがする。まるで生きているような雰囲気だった。



島の高いところからは、湖が一望できる。どこの港から来た便だろうか。長浜以外にも今津や彦根からの便が発着する。


宝物館から唐門、観音堂、舟廊下を経て、都久夫須麻神社に出る。



都久夫須麻神社。舟廊下のあたりは現在、修復中となっている。



都久夫須麻神社の参道から船着き場が見える。



桟橋。帰りの便は10時50分発。滞在時間は80分。見どころは限られていて、その半分でも足りるくらいの短い旅だったが、なかなか充実した時間を過ごすことができた。



この旅行は練って計画を立てたわけではなかった。急に行くことになって、行けることになった。ホテルも空いていた。旅行の間、相当な雨に降られたが、舟に乗る前から、降りるまで、雨は降らなかった。それらの偶然は、ひょっとしたら、あの弁財天のせいではないだろうか。弁財天に引き寄せられたのではないか。弁財天に招かれた、と考えるならば、この旅行が特別なもののように感じられた。もちろん、そんなことはないのだろうが、大阪への帰り道、豪雨に打たれる車の中、そんなことを考えた。


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