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ピアノ(鍵盤楽器)協奏曲第1番ニ短調BWV1052


クラシック音楽の素晴らしいところは沢山あるが、何年も続けて聴くことができるのは、本当に優れた点だと思う。5年前や10年前に死ぬほど繰り返して聴いた曲でも、5年や10年経っても平気でずっと聴き続けている。指揮者やオーケストラ、演奏者によっても全然違ってくるし、聴き飽きたと思った曲も、生で聴いたら発見がある。


そんなわけで、来る日も来る日もクラシック音楽を聴いている。最近はなぜかバッハを聴いている。バッハの音楽は一言でいうと「崇高」だ。バッハにとって音楽とは、楽しみのためのものではなくて、祈りや信仰である。その形は、科学に近く、バッハにとって曲を書くことは、真理への探究の道であったのかもしれない。私は楽しみとして聴いているが、バッハとしては自分の音楽が楽しみとして聴かれる時代が来るなんて想像できなかったことかもしれない。


ピアノ協奏曲第1番は、クラシック音楽を聴きはじめた頃からずっと聴き続けている曲で、私が持っているCDはそれほど多くないが、同じCDを繰り返し聴いている。全然、飽きない。冒頭、オーケストラと鍵盤楽器が一緒にいなってテーマを奏でる部分はとても壮麗だ。楽章を通して登場するこのテーマに心を打たれる。後世のピアノ協奏曲に比べると原始的ともいえるオーケストレーションも、古さよりは雰囲気を感じさせる。第2楽章は緩徐楽章で悲しさや寂しさよりも厳しさを感じる。とても格調が高い。第3楽章は第1楽章を思い出させるような気高いものだ。


バッハ:P協奏曲第1&2&3&4&5&7番

バッハ:P協奏曲第1&2&3&4&5&7番


古くはグレン・グールドバーンスタインの指揮で演奏した名盤が知られている。古い録音なので音質があまり良くないとはいえ、グールドの才能の巨大さと、バーンスタインのスケールの大きさがよくわかる。


バッハ:ピアノ協奏曲第1、2、4番

バッハ:ピアノ協奏曲第1、2、4番


私は、ペライアがアカデミー・オブ・セントマーティン・イン・ザ・フィールズを弾き振りした録音を最も好んで聴いている。一言でいうと、「癒し」の名演。ペライアのタッチはとても柔らかく、繊細だ。どうすればこんなにやさしい音色が出せるのだろう。独奏楽器とオーケストラのバランス、音の強弱の変化、細部のニュアンスが豊かで、最高の演奏となっている。欠点が一つもない。中でも、第3楽章の終盤でのピアニシモは、類のないほどの美しい演奏となっているので、ぜひ、聴いてほしい。


バッハ:ピアノ協奏曲集

バッハ:ピアノ協奏曲集


この曲のテクニカルな面白さを最も味わえるのがカツァリスのピアノによるものだ。カツァリスはまさに、本物のヴィルトゥオーゾという感じだ。色彩豊かでしかも立体的。大変に指が良く廻りこれはもう自由自在だ。本当に巧いピアニストだ。オーケストラのリスト室内管弦楽団の演奏も非常に巧く軽妙で、ピアノとよく合っている。


バッハ:ピアノ協奏曲集

バッハ:ピアノ協奏曲集


ピリス独奏で、コルボの指揮によるこちらのCDは、演奏テンポもゆっくりで、もっともオーソドックスな演奏と感じる。宗教音楽を得意とするコルボが振るグルベンキアン財団室内管弦楽団サウンドは派手ではないが透明感に満ちており、ピリスの清廉な音色と実によくマッチしている。私はこの演奏を聴いているとき、なぜか頭の中にリスボンジェロニモ修道院でこの曲が流れている映像が流れた。


バッハ・トランスクライブド

バッハ・トランスクライブド


エレーヌ・グリモーの演奏も素晴らしい。色彩が豊かというわけでも、テクニカルというわけでもないが、とても印象的な演奏だ。タッチは硬めで遊びがなく、ゴツゴツとしており、まるで石造りの教会のようだ。まるでグールドみたいに叩きつけるようなタッチで、思いのたけをぶつけるような力強い演奏である。何が彼女をバッハに駆り立てるのだろう。感動的な名演だ。またこのCD自体が、一貫したコンセプトで貫かれていて(平均律クラヴィーア曲集からの前奏曲とフーガでピアノ協奏曲を挟み、後半はブゾーニやリスト、ラフマニノフによる編曲へと至る)、彼女の独特のプログラミングのセンスを感じる内容である。


◇  ◇  ◇


以上、ピアノによるものを挙げてきたが、バッハの時代にはピアノがなかったので、チェンバロによるものを一つ挙げておきたい。



コープマンとアムステルダムバロック・オーケストラによる演奏。ピアノと比べると独奏部分での表現力で劣るが、伴奏に入った時、チェンバロはやっぱりいいなと思う。主旋律を弾くオーケストラの美しさが際立つ。ピアノの時とは別の曲みたいに違った面が見える。


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