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メトネルのピアノ協奏曲第1番


今日は、私が好きなメトレルのピアノ協奏曲第1番について書いてみたい。メトレルは、ロシアの作曲家で、ラフマニノフより少し若く、ストラヴィンスキーよりやや年長だ。同じロシア出身の作曲家でも、ストラヴィンスキーやたちがおこなった新しい音楽とは一線を画し、一途に古典的音楽を書いた人である。出自を辿ればドイツ系で、宗教はプロテスタントロシア革命後にロシアには戻らず、フランスを経て、最終的にはロンドンで没するという経歴を辿った。

メトレルは、多数のピアノ曲のほか、全部で3曲のピアノ協奏曲を残した。ほとんどの曲がこれまで日本ではあまり演奏されることはなかったが、2004年に、マルカンドレ・アムランソリストを務め、東京フィルの演奏で、第2番の日本初演を行った。1番や3番は日本で演奏されたことがあるのだろうか。私は3番をそれほど好まないが、1番は2番と同じような匂いを持った曲で、規模で言っても同じくらいの作品だが、私が好きなのは1番の方だ。

Piano Concertos

Piano Concertos


ピアノが先導する冒頭の主題が凄い。続くオーケストラ。音の洪水のように猛烈なオーケストレーション。私がこの曲を初めて聴いたときの衝撃は、ニールセンの交響曲第4番『滅せざるもの(不滅)』を聴いたときの衝撃に近いものがある。冒頭の数音を聴いただけで圧倒された感覚は他にあまりない。ニールセンの4番と、この曲くらいだ。突然目の前に現れた巨大なもの。安っぽい共感を拒絶するような孤高の存在。覚悟を求められるような恐るべきテンション。


全曲に渡って、共通するモチーフが支配する循環形式の協奏曲で、ピアノとオーケストラは対等に渡り合う。ピアノが主役でオーケストラは添え物というタイプの曲ではなく、ピアノ入り交響曲と表現しても良いような曲で、その点では、ブラームスの2曲のピアノ協奏曲やシューマンのピアノ協奏曲に近い。そのうえ、ピアノのパートは傑出したピアニストでなければこなせないような超絶的な技巧が必要とされる。3楽章構成の曲は続けて演奏され、冒頭から最後まで素晴らしい緊張感がみなぎっている。

この曲から感じるのは、美しさと厳めしさと雄々しさ(迫力)である。ラフマニノフみたいにロマンチックな旋律と、シベリウスみたいな厳しさ、ニールセンのような迫力。35分弱くらいの曲だが、通して聴くと、一仕事終えたような疲労感と、すごい音楽体験をしたという充実感が残る。


こんなに素晴らしい曲だが、世間的にはマイナーな名曲の範疇にとどまっている。こういう曲は時々聴いて、「良い」と思うタイプの曲なのかもしれないが、私はメトレルのピアノ協奏曲第1番は、チャイコフスキーラフマニノフのピアノ協奏曲と同じくらいの頻度でよく聴く。私のなかではマイナーな佳曲という位置付けでなく、王道のピアノ協奏曲となっている。