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サイモン・ラトル&ベルリン・フィルのベートーヴェン交響曲全集

サイモン・ラトル指揮、ベルリン・フィル演奏によるベートーヴェン交響曲全集を愛聴している。


演奏の収録は2015年秋で、2016年にまず、ブルーレイ同梱版が発売された。このBOXセットは、ベルリン・フィルによる自主レーベルからのリリースで、(内容的を考えると安いといえるかもしれないが)これまで彼の録音を発売してきたEMIやグラモフォンといったレーベルからするとかなり高価だということもあって、私はなかなか手に入れることができなかった。


私が購入したのは、SACD Hybrid版で、2018年に発売されたものだ。CD5枚組で中のケースが紙ジャケット仕様なので取り出すのに気を使うが、再生は普通のCDプレイヤーで問題なく行うことができる。私はSACDプレイヤーも持っており、もちろんそちらでの再生も可能だ。


SACD Hybrid版(CDプレイヤーで再生可能)


■ブルーレイ同梱版

BEETHOVEN SYMPHONIES 1-9 -CD+BLRY-(5CD+3BLRY)

BEETHOVEN SYMPHONIES 1-9 -CD+BLRY-(5CD+3BLRY)


手に入れた日から、1番から9番まで順番に聴いていくと、いままで聴いたことのないような素晴らしい演奏で、これはひょっとすると史上最高の演奏ではないかとさえ感じるほどのものだった。2002年から首席指揮者として関わってきたベルリン・フィルが、完全に彼の楽器となった。ラトルは2018年で既に首席指揮者を退任しているが、任期終盤でついにベートーヴェンの決定版を残した。これ以降のベートーヴェン交響曲の演奏は、この演奏を知ったうえで行うことになるのかと考えると、改めて彼らが到達したレベルに驚かざるを得ない。


どの演奏もベストに近く、私にとっては、これ以上、何を望むのかという感じだった。点数をつけるのは難しいが、敢えてつけてみたい。


1番・・・・98点
2番・・・・96点
3番・・・・95点
4番・・・・96点
5番・・・・95点
6番・・・・97点
7番・・・・97点
8番・・・・96点
9番・・・100点


軒並み高得点が並ぶ。最初に聴いた1番は鮮烈だった。ラトルの意欲的な音楽作りとベルリン・フィルの演奏の精度の高さが一体となって、この全集を盛り上げる。6番『田園』は、ずっとオーケストラの音に浸りたい気持ちになる。こんなに良い音で聴くことができて良いのだろうかと、幸せな気持ちになる。9番『合唱』は、判断基準を超えている。過去に聴いた名盤・名演を思い出しながら、大体自分の中の基準で評価していくのだが、聴き終えたときの感動はそれを超えていた。演奏の質、テンションの高さ、また第九らしい精神性。これは演奏の力だろうか。第九の力なのだろうか。しかしつまらない演奏を聴くと、曲に失礼だと思う時もあるので、曲の素晴らしさが再現される演奏こそが素晴らしいはずだ。まるで第九が初演された場に居合わせたようなリアルタイムの感動があった。どうしてCDにこれほどの情報が入り切るのだろうか。とにかくすごい演奏なので、是非一度聴いてみてほしい。


サイモン・ラトルウィーン・フィル

Beethoven Symphonies

Beethoven Symphonies


ラトルによるベートーヴェン交響曲全集としては、ウィーン・フィルとのコンビで録音したEMI版が有名で、私もそれをよく聴いた。若く、アグレッシブで意欲的で、伝統的なベートーヴェンらしくないベートーヴェンに、ウィーン・フィルらしくないウィーン・フィル、指揮者とオーケストラの緊張関係が火花が散るようで、とても興味深い演奏で、今でも時々聴く。それに対し、ベルリン・フィルとの新しい録音では、ラトルはラトルらしく、ポジティブで意欲的。ベルリン・フィルはいかにもベルリン・フィルらしく、スマートでモダン。長年のパートナーシップで様々な実験・試行を経て経験を積み、気が付いたら周りに誰もいなくなるくらいのレベルに達していた。一言でいうと「孤高」。よくぞここまで。その成果を見て(聴いて)、感慨深いものがある。