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メトレル・ピアノ協奏曲第2番ハ短調(Op.50)

メトレルのピアノ協奏曲について。私が好きなのは1番の方だが2番も相当聴いている。同じロシアの作曲家でも、チャイコフスキーともラフマニノフとも違う、メトネルの個性が表れた隠れた名曲だ。


(↓メトレルのピアノ協奏曲第1番についてはこちらをご参照ください)
ushinabe1980.hatenadiary.jp


野球の投手に例えると、一番は本格派で、こちらは技巧派。技巧派とは言っても、小細工でかわす印象でなく、本格派がモデルチェンジをして、投手として成熟しスケールが大きくなった果ての技巧派という感じがする。仕事の丁寧さはプロフェッショナル。荒々しい迫力では1番に及ばないが、曲自体の興味深さでは上回るのではないかという気が最近している。


曲はオーソドックスな3楽章構成で、ラフマニノフのピアノ協奏曲のようなドラマチックな流れを特徴としている。何かの啓示のような冒頭から予断を許さない緊張感に満ちた第一楽章。大きな流れに任せる船に横たわっているような第二楽章。第三楽章は壮大な舞曲。第三楽章は曲を通してのハイライトで、大変テクニカルである。その曲を、マルク=アンドレ・アムランの演奏で聴く。


Piano Concerto, 2, : Hamelin(P) V.jurowski / Lpo +rachmaninov: Concerto, 3,

Piano Concerto, 2, : Hamelin(P) V.jurowski / Lpo +rachmaninov: Concerto, 3,


いわゆるマイナー名曲のひとつなので録音の種類は決して多くはない。数少ない録音の中からではあるが、アムランの演奏は、孤高のテクニックで他の追随を許さない。アムランはこの曲の日本初演を東京のサントリーホールで行ったこともあるし、現段階ではこのCDが決定盤という感じがする。


この難しい曲をよくここまで完璧に弾き切っているというのがまず驚くべき点で、全ての音符の粒が揃い、掘りは深く、歯切れがよい。アムラン以外のピアニストでは、この難しい曲をここまで支配的に弾きこなすことなどできないだろう。テレビの解像度に例えるなら、フルHD、4Kを通り越して、8K的な演奏である。CD以上の情報がこの中に入っているのではないか。私は、伝統芸能の名人芸や一子相伝お家芸を鑑賞するような気持ちで音楽を聴く。演奏はそのくらい圧倒的で、常人には計り知れない領域にある。


また、このCDにはラフマニノフのピアノ協奏曲3番ニ短調も併録されている。こちらの演奏も相当すごいということも最後に付け加えておきたい。